税収増を見込んだ県財政の考え方ついて他10件/本会議(令和5年第3回定例会)
1 県政における重要課題について (1) 税収増を見込んだ県財政の考え方について (2) 県立障がい者支援施設について ア 虐待事案等への対応について イ 中井やまゆり園における地方独立行政法人化について (3) 地域公共交通の確保について |
2 デジタル社会の実現に向けた取組について (1) 「県民目線のデジタル行政でやさしい社会の実現」について (2) 子育て支援のデジタル化について (3) 児童・生徒の問題行動・不登校等調査結果を受けた「かながわ子どもサポートドック」の充実について |
3 県民の安全・安心について (1) 大規模災害時における災害廃棄物処理対策について (2) 今後の観光客の避難対策について (3) 水道料金改定を契機とした企業庁の抜本的事業見直しについて (4) 県警察における交通死亡事故防止対策の強化について |
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税収増を見込んだ県財政の考え方について
(やなせ)
11月29日、国の経済対策に関する補正予算が成立しました。
この経済対策の大きな考え方の一つに、「税収が増加する一方、長引く物価高騰が国民生活を圧迫し、回復に伴う生活実感の改善を妨げているため、この成長の成果を国民に適切に『還元』する」というものがあると承知しています。
こうした考え方に基づき、「物価高から国民生活を守る取組」として、光熱費等の激変緩和措置や、地方自治体への交付金の拡大の他、所得税・個人住民税の減税などが、対策として掲げられています。
なお、この減税措置については、地方税である個人住民税も対象となるため、県の税収にも影響が生じます。国は「この減税による地方の減収額は、全額国費で補填する」としていますが、臨時財政対策債のように、地方に借金を負わせるやり方ではなく、現金である交付金でしっかり補填するよう、国へ主張していく必要があると考えます。
一方、本県の税収に関する近年の推移を見ますと、国税の増収と比例する形で、増収傾向にあります。9月定例会での知事の説明によれば、令和5年度・6年度ともに増収を見込んでいるとのことでありました。
また、財源不足額について、近年の推移を見ると、令和3年度は、新型コロナの影響により、1,100億円まで膨らみましたが、その後は、4年度が850億円、5年度は350億円、6年度は300億円と、県税の増収に伴い、不足額も減少しています。
税収については、昨今の社会経済情勢の不安定さに鑑みれば、現在の増収傾向がいつまで継続するか不透明な部分はありますが、財政状況については、財源不足額の減少に加え、県債残高が順調に減少していることを考えると、確実に改善していると感じています。
こうした状況を踏まえれば、財政健全化の手綱を完全に緩めることは慎むべきであるとは思いますが、これまでの「県債残高の減少を目標とした財政運営」から転換するべき局面を迎えていると考えます。
例えば、子ども・子育てや、医療・介護、災害対策に関する施策の拡充や、私立高等学校等へ通う生徒への学費補助の拡充など、税収増の果実をしっかりと県民生活の改善に向けた取組へと振り向け、還元していくべきではないでしょうか。
そこで、知事に伺います。
税収増により確保した財源について、県民生活の安定や安全・安心に資する政策に活用するべきと考えますが、知事の所見を伺います。
(知事)
本県の県税収入は、コロナ禍からの海外経済の回復や円安の進行などにより、令和4年度決算では過去最高の税収となり、また、5年度、6年度ともに、現時点では増収を見込んでいます。毎年度、財源不足に悩まされる本県財政にとって、税収増などで確保できる自主財源は、非常に貴重なものとなります。
そのため、こうした財源については、財源不足の解消や早急に対応すべき施策に活用するほか、可能な限り基金に積み立て、その効果を中長期的に発揮させることを財政運営の基本としてきました。
近年の事例として、令和4年度では、コロナ禍で顕在化した生活困窮者への支援に活用したほか、急傾斜地崩壊対策や交通安全施設の整備など、インフラ整備の加速化に対して、積立てを行いました。
また、5年度も、県有施設のトイレ整備や老朽化対策など、県民生活に直結する施設整備の取組に加え、脱炭素対策や子ども・子育て施策などの喫緊の課題への取組に対して、積立てを行いました。今後については、海外経済の後退懸念などもあり、先行きは不透明ですが、5年度の税収が増収となった場合は、来年度予算の財源不足の解消に活用していきます。
また、早急に対応すべき取組の拡充や、中長期的な視点で取り組むべき施策を対象とした、基金への積立てについても併せて検討していきたいと考えています。県では、貴重な財源を最大限有効活用し、県民生活に直結する取組などを進めることで、税収増の効果を県民の皆様に還元してまいります。
(やなせ)
税収増により確保した財源について、まずは、財源不足の解消や早急に対応すべき取組へ活用した後に、さらに活用可能な財源があれば、基金積立てに活用していきたい、との答弁でした。
基金のあり方については、現在、国の方でも議論となっています。国が中長期的な政策推進のために、積み立てている基金事業の中には、成果目標や終了時期が不明確なものがあり、今後、すべての基金について、点検、見直しをしていくという方針が示されています。
県も、政策推進を目的とした基金への積立ては、こうした議論を参考にすべきであり、単に財源に余剰があるからという理由のみで、無計画に基金への積立てを行うべきではありません。
基金の趣旨にのっとり、適切な計画のもとに実施することで、はじめて、財源の有効な使い道と評価されるものだと考えます。
そこで、知事に伺います。
今後どのような方針に基づいて基金を活用していくのか、知事の所見を伺います。
(知事)
本県では、その時々の財政状況に左右されることなく、中長期的でかつ安定的に推進する必要がある取組について、後年度の必要額を基金に積み立ててきました。
具体的には、脱炭素対策や、県有施設の老朽化対策などにおいて、必要額をしっかりと算出した上で、基金への積立てを行いました。
今後も、積立ての必要性や、事業費の見込みをしっかりと精査した上で、基金積立てを行ってまいります。
(やなせ)
基金に積み立てるにしても、具体的な事業とその費用を掲げ活用いただきたい。一方、県民が抱える喫緊の課題は多くあるわけですから、何よりもその前に、県民からいただいた税金は、速やかに活用いただきたい。これまでの「県債残高の減少を目標とした財政運営からの転換」も踏まえ、一層の県民目線の財政運営を求めます。
県立障がい者支援施設/虐待事案等への対応について
(やなせ)
県立障害者支援施設においては、今年8月に、厚木精華園の職員が利用者を床に引き倒す、といった行為が虐待認定されました。
また、今月はじめには、愛名やまゆり園においても、利用者を蹴る、叩く、足をかけて転倒させるといった暴力行為を行ったことにより、職員が逮捕されるという事態が発生しました。
同園では、令和2年にも虐待事案が発生しており、再発防止に取り組んできた中で、起きたことであり、誠に遺憾です。
いずれの事案も、かながわ共同会が指定管理者として、運営している施設で起きたものであり、短期間のうちに立て続けに起きたことを考えると、虐待が起きてしまった施設はもちろんのこと、それ以外の県立施設の利用者や、そのご家族も、自分の施設は大丈夫なのだろうかと、とても不安な気持ちを、抱かれていると思われます。
県では、指定管理の基本協定に基づいて、原因究明や再発防止に向けて、必要な調査や指導・監督を行っているものと承知していますが、こうした利用者やご家族のお気持ちに、しっかりと寄り添って、早急、かつ、抜本的な改善が行われるように対応していく必要があると考えます。
また、一施設で起きてしまった事案としてではなく、共通する課題があるのではないかという視点を持って、他の県立施設においても同様の事案がないか、しっかりと点検することが必要です。
さらに、施設に任せっきりにすることがないよう、県としても、単なる指導・監督に留まらず、改善に向けて責任を持って進めていくことが重要であると考えます。
そこで、知事に伺います。
虐待事案が立て続けに発生したことを受けて、県として、県立障害者支援施設における支援を、どのようにチェックし、指導していく考えなのか、知事の所見を伺います。
(知事)
「当事者目線の障害福祉推進条例~ともに生きる社会を目指して~」の具現化を目指している中で、厚木精華園や愛名やまゆり園で、虐待事案が立て続けに発生しました。
特に、愛名やまゆり園の事案では、職員が利用者に暴力を振るい、逮捕されるという事態に発展したことを、非常に重く受け止めています。
この事案の重大性に鑑み、当日は本庁担当課長が園に行き、情報収集に当たるとともに、緊急で監査を実施し、幹部職員へのヒアリングや書類調査などを行いました。
また、県立施設長会議を臨時で招集し、事案の共有を図るとともに、全ての施設に対して、不適切な支援が行われていないか、徹底的な点検を指示しました。
今後、県としても、各園の見守りカメラの映像をチェックし、その結果、不適切な支援が確認されれば、速やかに現地に出向いて実態を把握した上で、改善指導を強化していきます。
また、障害当事者や家族を講師として、当事者の理解を深めるための研修を実施し、改めて園の利用者の人権を守るという意識を職員に徹底します。
県は、県立施設における利用者支援の状況をしっかりとチェックし、指導を行うことで、利用者やご家族の皆様の信頼を得られるよう、虐待事案の再発防止に全力で取り組んでまいります。
(やなせ)
知事は、シンポジウムで中井やまゆり園に関して、「膿を出し切る」と発言しておられると聞いていますが、指定管理とはいえ、同じ県立施設である、愛名やまゆり園、厚木精華園、津久井やまゆり園も同様でなければならないと考えます。指定管理法人に任せることなく、県として、膿はないのか、しっかり点検すべきです。チェックするとの答弁を頂きましたが、速やかな対応を求めます。
県立障がい者支援施設/中井やまゆり園における地方独立行政法人化について
(やなせ)
我が会派では、これまで、県立施設におけるガバナンスを強化し、虐待を防止するため、利用者支援の見える化について、議論を重ねてきたところです。
県は、県立施設に対するモニタリング方法について、書類中心で確認していたものを、職員が直接支援の現場に入って、具体的な支援内容を確認し、その結果を障害者 施策 審議会に報告する、といった改善を進めるなど、運営の透明性を高めながら、利用者支援の質の向上と、ガバナンスの強化が図られてきたものと承知しています。
こうした中、県では、中井やまゆり園を運営する、地方独立行政法人の設立を進めようとしていますが、先行事例の病院機構を見ると、万が一、厚木精華園や愛名やまゆり園のような虐待事案が起こった場合に、速やかに公表するのかなど、今までどおりの運営の透明性が確保されるのか危惧しています。
今後、県は、地方独立行政法人の設立に向けて、中期目標を立てていくことになると思いますが、その中で、地方独立行政法人の運営の透明性を確保したり、指定管理者制度におけるモニタリングのように、法人の運営や支援の状況を把握したりできないか、検討することも重要です。
そこで、知事に伺います。
中井やまゆり園の地方独立行政法人化に当たっては、運営状況の把握や透明性の確保をどのように行うのか、知事の所見を伺います。
(知事)
これまで、県は、県立障害者支援施設の運営状況を把握するため、園や指定管理者などとの定期的な打合せや、指定管理者との協定に基づく随時モニタリング等を実施してきました。
また、身体拘束ゼロに向けた取組の見える化を進めるとともに、虐待事案や事故が発生した際には速やかに公表するなど、運営の透明性を確保してきました。
今後の県立施設の運営方法として検討している地方独立行政法人は、法人の自主的な事業運営を尊重する制度ですが、県が目指す当事者目線の支援を確実に実施するためには、引き続き運営状況を把握することが必要だと考えています。
そこで、地方独立行政法人化に当たっては、県だけでなく、学識者などの第三者により、運営状況を定期的に把握する仕組みを構築します。
また、議会からは、県が設置した他の地方独立行政法人では、透明性が十分に確保されていないとの御指摘を受けていますが、新たな独法では、虐待事案などが発生した際には、速やかに公表するなど、積極的に情報を開示するルールを策定します。
これらを、法人が達成すべき業務運営に関する指針である中期目標等に盛り込むことを検討していきます。
県は、県立障害者支援施設の独法化における、運営状況の把握や透明性の確保という課題にしっかりと対応し、当事者目線の支援を進めてまいります。
(やなせ)
今、まさに県立病院機構について課題検証が行われていますが、例え、虐待事案などが起きても、つまびらかに報告されるのか、今までの様なモニタリングはできるのか、最初に、それらのスキームを構築しなければならないことは言うまでもありません。
独法化により、よりフレキシブルな運営になることに一定の理解はしますが、透明性の担保、チェック機能の維持は必要不可欠です。適切な対応を強く求めます。
地域公共交通の確保について
(やなせ)
人口減少や少子高齢化の進展により、運転手不足が深刻化し、地域公共交通であるバス交通の維持・確保が年々厳しい状況となっています。
また、生活様式の変化などによる利用者の減少により、交通事業者の経営が悪化しており、利用者が少ない路線を廃止、減便せざるを得ない状況にあり、過去5年で18系統が廃止されています。加えて、自動車運転免許証の返納者の増加などにより、地域の住民の移動の確保が課題となっています。
さらに、自動車運転業務は、いわゆる2024年問題により、労働時間が短縮されるため、運転手不足が加速していくと考えられます。
地域公共交通の取組は、地域の実情を把握している市町村が主体となって行うものと認識していますが、市町村の取組のみでは、地域の移動の確保は困難であり、広域自治体である県の支援が必要と考えます。
また、ドア・ツー・ドアの移動手段であるタクシーについても、コロナ禍の利用者減に伴う離職などにより、ここ5年で2割の運転者が減少し、タクシー不足の声があることも承知しています。
このため、県は、三浦市域のタクシー不足に対応するため、タクシー会社と連携し、一般のドライバーが自家用車を使って有償で乗客を輸送する、神奈川版ライドシェアの検討を進めていますが、このような観光客等のための輸送手段ではなく、バス路線の廃止や減便に伴う地域公共交通確保に活かせないかという意見があります。
しかし、海外で行われているライドシェアは、交通死亡事故や、運転手による誘拐などの犯罪行為が発生しており、国内におけるライドシェア導入に関する世論調査でも反対の意見が多数あります。
こうした状況を踏まえ、今後、三浦市で予定している神奈川版ライドシェアの実証実験においては、その安全性、効果や採算性など、実施内容について、しっかりと検証していくことが非常に重要です。
そこで、知事に伺います。
神奈川版ライドシェアの検討が進む中で、県として、今後、地域公共交通の確保に、どのように取り組むのか、知事の所見を伺います。
(知事)
路線バスをはじめとする地域公共交通は、利用者の減少による経営悪化や、運転手不足の深刻化などにより、その安定的な維持・確保が厳しい状況にあります。
特に、県西部などにおいては、バス路線の廃止や減便が相次いでおり、誰もが自由に移動できる交通手段の確保が大きな課題となっています。
そこで県は、市町村やバス協会等で構成する「神奈川県地域交通研究会」などの場において、先進自治体の取組事例の紹介などを行い、地域公共交通の維持確保に向けた市町村の取組を後押ししてきました。
そうした中、夜間の時間帯にタクシー不足が生じている三浦市において、県は、市やタクシー会社と連携し、一般ドライバーが自家用車を用いて、有償で乗客の運送を行う、神奈川版ライドシェアの検討を進めています。
神奈川版ライドシェアは、地域公共交通の確保策としても有効な手段になると考えていますが、そのためには、安全性はもとより、利便性や導入効果などをしっかりと検証することが重要です。
そこで、今後、現行法制度の枠内で三浦市主体の実証実験を行えるよう、市などと協議を進めます。
その上で、検証から得られた安全面や運用面に関するノウハウをとりまとめ、地域交通研究会などの場で、地域公共交通の確保策の一つとして、 市町村に提示していきます。
県は、こうした取組により、市町村を支援することで、地域公共交通の確保を目指してまいります。
(やなせ)
利用者が少ないバス路線を廃止、減便せざるを得ない状況がでてくる中、地域の住民の移動の確保は課題です。バス事業者への支援のみならず、様々な交通手段の検討が求められます。自家用有償旅客運送の仕組みや、今回の三浦市での実証実験の検証も参考に、公共交通空白地域における県民の自由な移動を支える交通確保に一層取り組むよう求めます。
「県民目線のデジタル行政でやさしい社会の実現」について
(やなせ)
現在、県では2025年よりさらに先を見据え、仮称 新かながわグランドデザイン基本構想を策定中であり、その実施計画の骨子案において、目指すべき4年後の姿として、「県民目線のデジタル行政でやさしい社会の実現」が掲げられています。
この実施計画をデジタルの側面から支える個別計画が「神奈川DX計画」であり、9月の第3回定例会総務政策常任委員会において骨子案が報告されています。
この「神奈川DX計画」では、ビジョンとして新かながわグランドデザインの実施計画と同じく「県民目線のデジタル行政でやさしい社会の実現」を掲げています。
このことは、今後、本県において、幅広い分野で、デジタルを活用した施策・事業が強力に展開されていくという、メッセージだと受け止めており、県のDXの取組が、格段に前進していくことを期待しています。
本県では、本格的な人口減少局面に入り、少子高齢化が進行しており、今後生産年齢人口の減少が見込まれる中、個人の価値観や働き方が多様化しています。
そのため、県民が、デジタル技術の活用により、県の行政サービスの変革を実感できることが重要であり、これまで以上に、県民の安全・安心や利便性向上を図る「くらしのデジタル化」に全庁を挙げて取り組んでいただきたいと考えます。
それらの中で、行政サービスの提供が必要な、県民個々人に対して、漏れなく情報提供や支援を行うことができる「プッシュ型サービス」は有効な取組であり、それを起点に、悩みの解決や行政手続きが、デジタルで完結するなどの実現にも、ぜひ取り組んでもらいたいと考えます。
こうした取組を実現するためには、広域自治体である神奈川県だけではなく、住民に身近な行政サービスを担う市町村のDX推進が不可欠であり、DXの基礎となるデータの利活用を含めた県と市町村との連携が欠かせません。
そこで知事に伺います。
県では、新たな「神奈川DX計画」において、「くらしのデジタル化」の取組の充実に、どのように取り組んでいこうとしているのか、知事の所見を伺います。
(知事)
これまで県では、令和元年に策定した「かながわICT・データ利活用 推進計画」等に基づき、ICT及びデータを積極的に利活用してきました。
これにより例えば、行政手続のオンライン化や公金収納のキャッシュレス化など、県民の利便性を高める取組を大きく前進させました。
また、新型コロナ対策 パーソナルサポートや神奈川県 療養サポートなどの先駆的な取組により、新型コロナウイルス感染症に対応してきました。
新たに策定する「神奈川DX計画」では、「新かながわグランドデザイン 実施計画」のプロジェクトを、「くらしのデジタル化」の施策分野として位置づけ、様々な施策にデジタルの力を取り入れていきます。
その中でも、必要なタイミングで必要な情報を受け取ることができるプッシュ型サービスは、県民目線のデジタル行政の実現においても有用な手段です。
一方で、県民に身近な手続きは市町村が所管していることが多く、こうした取組の推進にあたっては、市町村との連携が不可欠です。
そのため、計画の基本方針に市町村との連携を位置づけ、県と市町村が一体になって、データ統合連携基盤の利用分野の拡大、情報システムの共同調達・共同利用や外部人材の共同活用の検討を進めるなど、DX推進の取組を強化します。
さらに、行政課題に対して、民間と行政が一堂に会してアイデアを出し合う「行政DXアイデアソン」等を通じて、民間の視点を行政サービスにも積極的に取り入れていきます。
こうした取組を通じて、様々な分野で「くらしのデジタル化」を充実させ、県民の皆様がやさしい社会を実感できる県のDXを着実に推進してまいります。
(やなせ)
県は、県の最上位の計画であるグランドデザインにおいて、目指すべき4年後の姿として、「県民目線のデジタル行政でやさしい社会の実現」を掲げようとしています。是非、実現を期待したいところでありますが、チャレンジングな目標でもあり、各局の政策立案に大きな意識改革が必要と感じます。
また、やさしい社会の実現には、行政のデジタル化のみならず、モビリティやシニアライフ分野等、行政と民間一体となったデジタルサービスも求められます。そのような中、スマートシティ実現に向けデジタルの仕組みづくりに旺盛な、民間IT事業者も存在します。
市町村との連携のみならず、民間事業者とも積極的に連携し、4年後に、「県民目線のデジタル行政でやさしい社会」が、この神奈川県で実現するよう、確実に取り組むことを求めます。
子育て支援のデジタル化について
(やなせ)
インターネットやスマートフォンが普及した現在、県や市町村の行政情報の発信もデジタル化していく必要があり、特にいわゆる「デジタルネイティブ」と言われ、デジタル機器に慣れ親しんだ世代が多い、子育て家庭に対しては、デジタルの力を活用した情報提供に力を入れていくべきと考えます。
県では、ホームページから子育て支援情報を発信しており、さらに6月補正予算では「子育てパーソナルサポート事業」を計上し、情報発信に積極的に取り組んでいることは承知していますが、国の調査によると、行政手続きについて、子育て家庭からは「何をどのタイミングで、どこでするべきか分からず戸惑った」「ネットで不確かな情報がいろいろ出てきて、何が正しいのか分からない」といった声があり、情報発信に課題があると感じています。
子ども1人ひとりの成長過程に応じて、必要とされる情報は異なるため、保護者が数多くの情報の中から、自分が必要している情報を探すのは、大変な時間と手間がかかります。中には、探すのを諦めてしまい、必要な手当や支援を受けられずにいる方もいると思われます。
また、「産後間もない体の状態で、役所に行かなければいけないのが、辛かった」「予防接種の提出書類は、種類が多いにもかかわらず、全て手書きであり、小さな子どもを抱えながらの手続きは、大変だった」といった行政手続きのデジタル化を求める声もあり、市町村の窓口に赴き、紙に手書きで申請するという従来の手続きを見直し、自宅からスマートフォンやパソコンで手続きできる環境を整えていく必要があると考えます。
子育てをより楽しく、前向きなものとするためには、子どもや子育て家庭が、必要な情報に素早く簡単にアクセスでき、様々な行政手続きをストレスなく行える環境を、整備することが必要です。
デジタル化が進むことで、子育て支援の現場を担う市町村においても、印刷や郵送、窓口での手続きの案内といった業務が軽減され、子ども・子育て施策の質の向上に、時間と労力を振り向けることが可能になるはずです。
そこで、知事に伺います。
子育て支援情報の発信や行政手続きのデジタル化について、今後どのように取り組んでいくのか、知事の所見を伺います。
(知事)
子育て世帯の負担を軽減するためには、デジタルの力を活用した、きめ細かく丁寧な情報発信が重要です。
県では、LINEを活用し、子育て世帯が必要とする行政の支援情報を発信したり、育児に関する悩みの相談を受ける「子育てパーソナルサポート」の開発を進めています。
こうした中、今月実施した「子育て当事者とのオンライン対話」では、「行政のお知らせは紙で郵送されてくるが、失くしてしまいそう」「予防接種のアプリのように必要な情報をプッシュ配信してほしい」といった声を伺いました。
また、市町村からも、子育て当事者の声として、県や市町村のホームページでは、必要な情報を自ら探さなければならず、分かりにくいといった課題が挙げられています。
そこで県では、子どもの年齢やお住いの市町村などを、あらかじめ登録していただくと、子ども一人ひとりに合った支援情報をプッシュ型でタイムリーに配信する機能を「子育てパーソナルサポート」に搭載していきます。
現在、市町村の支援情報を収集・整理するなど準備を進めており、できる限り速やかにリリースする予定です。
さらに、市町村の窓口に行かなくてもスマートフォンで行政手続きの申請ができるよう、市町村と連携してデジタル化への早期移行を目指していきます。
今後も、子育て世帯の負担を軽減し、子どもたちが健やかに成長できる神奈川を目指し、子育て支援のデジタル化にしっかりと取り組んでまいります。
(やなせ)
子育てにおいては、行政にかかわる情報や手続きが多い中、行政の情報化を一元化し、デジタルの力で、子育てを支援する取組には大いに期待したいところです。ただ、県のみならず各市町村の情報も必要となる一方、正確でかつ最新の情報を保持するには工夫が必要です。有効なデータ連携基盤を構築する等、留意してほしいと思います。
また、今回の「LINE子育てパーソナルサポート」の展開においては、子育て家庭の声・ニーズに的確に応えることで、「使ってよかった」「いいね」と、無理やりではなく、口コミで広まるLINEアプリとなるよう、改めてお願いしたいと思います。
児童・生徒の問題行動・不登校等 調査結果を受けた「かながわ子どもサポートドック」の充実について
(やなせ)
県教育委員会が公表した調査結果によると、令和4年度の県内の公立学校におけるいじめ認知件数は約3万8千件、また、不登校の児童・生徒数は、約2万4千人となり、過去最多の状況となりました。
私は、こうした、いじめや不登校に悩む子どもたちは、何らかのSOSを発しているのではないかと思います。子ども達なりに、思うこと、感じることがあっても、教員が気づいていない状況では、子どもたちは悩んでいることを表に出せないのではないかと考え、我が会派の古賀議員から、令和4年第3回定例会の一般質問において、教員のコミュニケーションスキル向上について質問し、教育長から、教員が児童・生徒との信頼関係を築いていく上で必要な、コミュニケーションスキルの更なる向上を図っていく、との答弁を頂きました。
また、本年3月に、国において、「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLO(こころ)プラン)」を取りまとめ、不登校の児童・生徒全ての学びの場を確保し、学びたいと思った時に学べる環境を整えることや、心の小さなSOSを見逃さず、チーム学校で支援することなどの施策が打ち出されました。
このような中、県教育委員会では全国に先駆け、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置を大幅に拡充するとともに、子どもたちが1人1台端末等を活用して、自己チェックを行う、「かながわ子どもサポートドック」に取り組んでいることについては、一定の評価をしています。
今回、いじめや不登校が過去最多という調査結果を受け、困難を抱える子どもたちにしっかりと対応していけるよう、市町村教育委員会とも連携し、取り組んでいくことが大切であると考えます。
そこで教育長に伺います。
児童・生徒の問題行動・不登校等調査結果を受け、困難を抱える子どもたちの着実な支援に向けて、特に県内の市町村立小・中学校においても 「かながわ子どもサポートドック」の取組を、さらに充実させていくべきと考えますが、教育長の所見を伺います。
(教育長)
本県の公立学校における、昨年度のいじめや不登校の数は、いずれも過去最多となり、こうした子どもたちへの支援が、喫緊の課題になっています。
県教育委員会では今年度から、スクールカウンセラー等を大幅に拡充し、全国に先駆けて、かながわ子どもサポートドックに取り組んでいます。
県立高校では、この9月に、1人1台端末を活用した生徒による自己チェックを実施し、自動的に分析された結果を基に、プッシュ型面談などを通じて、必要な支援を行っています。
その中には、これまで特に問題ないと捉えていた生徒が、校外で暴力等に悩んでいることを、学校が把握し、警察につなげて解決した事例があります。
また市町村立小・中学校では、それぞれの取組内容に、まだ差はあるものの、虐待を早期に発見し、児童相談所と連携して、保護者の支援につないだ事例も見られます。
そこで県教育委員会では、こうしたサポートドックの成果をとりまとめ、より多くの市町村立小・中学校で、取組が進むよう働きかけていきます。
併せて、今年度の取組を検証し、自己チェックの実施時期や質問内容を、より効果的なものとするなど、かながわ子どもサポートドックの取組を、さらに充実させてまいります。
(やなせ)
教育長から、かながわ子どもサポートドックを、より効果的な取組としていく、という趣旨の答弁がありましたが、具体的にはどのように取り組んでいくのか、教育長の所見を伺います。
(教育長)
かながわ子どもサポートドックを、より効果的な取組とするうえで、例えば、子どもたちが定期的に自己チェックを行うにあたり、質問内容を固定化せず、バリエーションを持たせる工夫などが必要です。
そこで、臨床心理士や大学教授などの意見も聞きながら、質問内容等の改善を図ってまいります。
(やなせ)
子どもたちが抱える困難を見える化すると共に、心理や福祉の専門人材をより効果的に活用し、必要な支援につなげていく「かながわ子どもサポートドック」の取組には大きな期待をしています。今後、専門家の協力も得ながら、潜在化する子どもたちの悩みをより確実にとらえられるよう、スクリーニングのブラッシュアップを図るとともに、県立高校のみならず、小・中学校においても活用してもらい、教育相談体制の強化を図るよう求めます。
大規模災害時における災害廃棄物処理対策について
(やなせ)
今年は、関東大震災から100年の節目の年に当たります。本県を震源としたこの地震では、首都圏に甚大な被害をもたらし、大量のがれきが発生しました。当時は、こうしたがれきを埋め立て利用して、現在の山下公園が生まれました。
近年では、2011年に発生した東日本大震災において、約2,000万トンの災害廃棄物が発生し、災害廃棄物の処理は、被災地の復旧・復興にとって大きな課題となりました。
本県は、都心南部直下地震や神奈川県西部地震等、発生の切迫性が指摘されるとともに、長期的には、大正型関東地震の発生も想定されています。
災害廃棄物の処理は、一義的には市町村が行うものであり、各市町村において対策が進められるものと認識しています。
しかし、こうした大規模災害が発生した場合、人口が密集する本県では、大量の災害廃棄物の発生が見込まれ、「神奈川県 地震被害想定調査報告書」によると、大正型関東地震が発生した場合、県内全体で1億トン近くの災害廃棄物が発生すると想定されていることから、県としても、広域的な見地から対策を検討していく必要があります。
大規模災害からの復旧・復興にあたっては、大量の災害廃棄物を円滑かつ迅速に処理する必要があり、そのためには、あらかじめ、県内における「廃棄物の処理能力や輸送能力」、「確保可能な仮置場の面積」などを把握した上で、どれだけの量の災害廃棄物を県内で処理することが可能か、を確認するとともに、仮に不足する場合、どのように対処していくのかを検討しておく必要があると考えます。
そこで知事に伺います。
大規模災害が発生した際に、膨大な量の災害廃棄物が発生することを見据え、県として、今後どのように災害廃棄物処理対策を進めていくのか、知事の所見を伺います。
(知事)
災害廃棄物の円滑かつ迅速な処理を図るため、県では、処理の主体である市町村に対して、災害廃棄物処理計画の策定を支援しています。
また、災害廃棄物の発生量や仮置場の必要面積の推計に必要なデータの提供等を行っています。
今後見込まれる大規模災害に備えるためには、市町村において、計画を策定する際、これらのデータに基づき、災害廃棄物の発生量を推計するとともに、収集運搬、仮置き、処分等の各段階で、処理可能な廃棄物の量も推計しておく必要があります。
しかし、こうした推計は、計画を策定済みの市町村であっても、必ずしも十分に行われていないことが課題となっています。
そこで、今年度改定する県災害廃棄物処理計画の中に、市町村が廃棄物の発生量や処理可能な量を推計できるように、県が技術的な支援を行うことを位置付け、より実効性のある市町村計画の策定・見直しを促します。
また、研修や訓練など様々な機会を通じて、市町村における災害廃棄物処理対策の課題の抽出や、実効性向上に向けた取組を後押しします。
さらに、市町村での処理が困難な場合に、民間施設等や広域での処理が可能となるよう、民間事業者団体との協定や、国の協議会等の枠組みによる対応を検討していきます。
県は、大規模災害時においても災害廃棄物の処理を適正かつ円滑・迅速に進めることができるよう、着実に対策を進めてまいります。
(やなせ)
大規模災害が発生した場合、災害廃棄物の処理が滞るようなことがあれば、復旧・復興の大きな障害となります。大量に発生する災害廃棄物を速やかに処理することができるよう、平時から、市町村の対応能力の把握と共に、県として広域的な見地から必要とされる対策を、災害廃棄物処理計画にも位置付け、大規模災害に備えるよう求めます。
今後の観光客の避難対策について
(やなせ)
大型台風や洪水、地震等の大規模災害の発生が懸念される中、観光客を呼び込む施策の推進に合わせて、呼び込んだ観光客の安全・安心を確保することも重要です。
先日、京都市において、観光客に特化した避難対策について、視察をしてきました。
観光客については、市町村が策定する地域防災計画において、帰宅困難者に位置づけられていると認識しており、京都市では、帰宅困難者のうち観光客数を約13万人と想定し、民間事業者と連携した対策を講じています。
例えば、発災時の一斉帰宅抑制のため、一時待機場所として、公共施設だけでなく、清水寺などの神社仏閣を「緊急避難広場」に、市内の旅館やホテルを、帰宅困難者が一時的に休憩・仮眠ができる「一時滞在施設」に指定しています。また、こうした情報を記載した帰宅困難者向けの、避難所マップを作成し、案内しています。
加え、発災時には、京都市帰宅困難者サイトにおいて、こうした一時滞在施設や、トイレ、Wi-Fiスポットなどを紹介するほか、各種交通機関の運行情報を、多言語で掲載することとしています。
このほか、LINEWORKSという、ビジネス向け情報共有サイトを活用し、災害発生時に、行政、事業者等が情報共有できる体制を構築し、訓練も実施しています。
さらに、こうした支援の流れと民間事業者との役割分担をとりまとめた「帰宅困難観光客 避難誘導計画」を策定しています。
一方、本県の防災全般については、来年の地震防災戦略の改定に向けて、現在、被害想定調査を実施している最中と承知しています。
コロナ禍が明け、県内の観光客数が徐々に増えてきていることを考えると、こうした戦略などに、帰宅困難観光客も含めた避難対策を、しっかり位置付ける必要があると考えます。
この他、発災時には、帰宅困難者の避難先を確保するため、市町村では、宿泊施設等と「帰宅困難者の受入に関する協定」を締結しています。しかし、例えば、観光客が多く訪れる箱根町においては577の宿泊施設があるものの、「災害時等における避難所開設の協力に関する協定」を締結している宿泊施設数は、6施設に留まるとのこと、県として、市町村の支援に取り組むことも喫緊の課題です。
観光客の避難対策において、避難所の開設、避難誘導等については、一義的に市町村の役割であることは承知していますが、特に本県は、日帰り観光客が多いことから、こうした観点も踏まえ、今後は、京都市のように、観光客を念頭に置いた対策が必要であり、県として、必要な施策や支援を講じるべきと考えます。
そこで、知事に伺います。
今後の観光客の避難対策について、どのように取り組んでいくのか、知事の所見を伺います。(知事)
観光振興にあたり、観光客の安全・安心を確保することは重要です。
県は、これまで、市町村と、観光危機管理に関する先進事例等の情報共有を図ってきました。また、観光客への正確かつ迅速な情報提供を行うために、発災時には、観光情報ウェブサイトにおいても、災害状況や避難に役立つ情報をトップページから閲覧できるようにする取組を進めています。
さらに、市町村と連携し、観光客を含めた帰宅困難者を支援するため、一時滞在施設や災害時帰宅支援ステーションの確保に努めているところです。
こうした中、コロナ禍を経て、観光需要も回復してきており、観光客に対する災害対応の取組をさらに進める必要があります。
そこで、県内市町村の災害対応の最新の取組状況や、京都市が進める民間事業者との協定締結事例を紹介するなどして、市町村とともに危機管理意識の向上を図ります。
さらに、国が自治体向けに作成した「観光危機管理計画等作成の手引き」を活用して研修を実施することで、地域の特徴に応じた取組を支援します。
また、現在取り組んでいる「地震被害想定の見直し」では、当事者目線での被害シナリオを検討しており、観光客が直面する帰宅困難などの課題についても検討を深め、必要な対策については、「次期地震防災戦略」に位置付けたいと考えています。
県は、県内を訪れる観光客の安全・安心のため、市町村と連携した観光客の避難対策に取り組んでまいります。
(やなせ)
観光振興を図る上では、観光客の安全・安心の確保は重要です。
観光客の避難対策については、デジタル技術も活用しながら、市町村の取組を支援するとともに、県、市町村双方の観光部門と防災部門の連携をさらに進めていくことで、県内を訪れる観光客の安全・安心の確保に取り組むよう求めます。
水道料金改定を契機とした企業庁の抜本的事業見直しについて
(やなせ)
企業庁には、独立採算の下、水道・電気など5つの独立した事業会計があり、県民への水道や電気の供給などの役割を担っていますが、時代や環境の変化に合わせ、それぞれの特性に応じて、経営のあり方も変革していく必要があると考えます。
中でも、「公営企業資金等 運用事業会計」は、土地造成事業などで得た資金を活用し、一般会計はじめ他会計等への長期貸付や、地域振興のための施設整備など、本県独自の役割を担ってきました。
しかし、社会経済情勢が大きく変化したことで、現在は資金の大半の約470億円を水道事業会計に貸付け、年間約1億円の利息収入を得る形となっており、地域振興施設についても、市町村からの新たな整備要請がないなど、保有資金の有効活用や地域振興という政策目的を十分に果たせているのか、疑問です。
また、保有するオフィスビル「プロミティふちのべ」では、技術継承の必要性は理解するものの、職員の約4分の1が県OBであり、企業庁が出資する、「一般財団法人かながわ水・エネルギーサービス」に随意契約で貸し付け、サブリース方式のビル経営を行っており、こうした経営のあり方の見直しが必要なのではないかと考えます。
こうした状況の中、企業庁の水道事業では、将来に亘り持続可能な水道を維持するためとして、現在、県営水道事業審議会から、平成以降最大となる25%の料金改定の答申が出されています。
当然、水道事業の中において、経営効率化に努めた上での料金改定ではあろうし、先日の本会議で、企業庁長から「支出・収入の徹底的な見直しで、改定率を22%に抑制する」旨の答弁はありましたが、物価高騰により県民生活が圧迫される中にあっては、人口減少など、社会のあり方が大きく変わりつつあることを認識した上で、水道事業会計にとどまらず、他の事業会計においても、聖域なき見直しを行い、コスト削減など「身を削る努力」を示し、県民の理解を得ていくよう努めることが重要であると考えます。
そこで、企業庁長に伺います。
水道料金改定を契機とした企業庁の抜本的事業見直しの一つとして、公営企業資金等運用事業会計について、改めて会計設立の目的に立ち返り、資金の運用をはじめとする 事業の効果や意義について検証し、従来の考えにとらわれずに 見直していくべきではないかと考えますが、企業庁長の所見を伺います。
(企業庁長)
企業庁関係のご質問にお答えします。水道料金改定を契機とした企業庁の抜本的事業見直しについてお尋ねがありました。
現在、県営水道では、将来にわたる安定給水のため水道料金の改定をお願いせざるを得ない状況にあり、県民の皆様のご理解をいただく上でも、水道事業にとどまらず、あらゆる事業について見直しを図っていくことが重要です。
議員ご指摘の「公営企業資金等運用事業会計」は、土地造成事業等で得た資金を、企業庁や県が行う建設事業への貸付けに充てるほか、市町村からの要請に基づく地域振興施設の整備等に活用するなど、その時々の社会経済情勢やニーズに応えてきました。
しかし、現在の資金貸付先の大半は水道事業であり、また、地域振興施設も市町村からの新たな整備要請が途切れているなど、保有する資金や資産の更なる有効活用が課題となっています。
そこで、今後は、資金貸付や地域振興施設整備が果たしてきた成果と課題を改めて検証するとともに、市町村等の今後のニーズを十分精査の上、事業の必要性・あり方から効率的・効果的な資金の活用方策まで幅広く検討を行っていきます。
また、企業庁自身が保有する「プロミティふちのべビル」については、累積赤字の解消を目指して、現在、サウンディング型の市場調査や、相模原市のまちづくりとの連携可能性の確認等を行っており、ビル経営のあり方を見直していきます。
このような経営努力の下、あらゆる可能性を排除せず事業の見直しを実施することにより、企業庁全体で更なる効率性を追求し、県民の皆様の信頼に応えてまいります。
(やなせ)
今回、唐突に、20年近くぶりに、25%もの料金改定の答申が出されました。物価高騰が止まらない中、ご負担をお願いする県民のご理解を得るためには、まずは企業庁全体として、聖域なき改革を断行していかねばならないと考えます。
そうした視点から、「公営企業資金等 運用事業会計」を取り上げました。
水道事業は、この会計に年間約一億円もの利息を支払っています。水道料金の大幅な値上げを前に、果たしてこの形のまま継続してよいのか、それで県民のご理解をいただけるのか、はなはだ疑問であります。
企業庁長からは、抜本的な見直しも辞さない主旨の、今までにない踏み込んだ答弁をいただきました。人口減少社会へと時代が大きく変化し、企業庁も新たなフェーズを迎えた今、ぜひ、不断の覚悟で、経営改革を断行されることを求めます。
県警察における交通死亡事故防止対策の強化について (やなせ)
昨年、県内で交通事故により亡くなられた方は113人と大幅に減少し、統計が残る昭和23年以降で過去最少でした。
県警察では、交通事故の発生予測にAIシステムを活用するなど、新しい技術も取り入れつつ、社会情勢や交通情勢に応じた効果的な交通事故防止対策の推進に努めているとのことであり、こうした様々な取組の積み重ねが、交通事故死者数の減少という結果に結びついたものと理解しています。
しかしながら、本年は、10月に入り交通死亡事故が多発し、県では、令和4年7月の運用開始以降、初めてとなる「神奈川県交通死亡事故多発警報」を発表しました。
この「神奈川県交通死亡事故多発警報」は、「神奈川県 交通安全対策協議会 規約」により、県内において7日間で7件以上の交通死亡事故が発生したときに発表されるものであり、県内では10月7日から13日までの7日間で、7件の交通死亡事故が発生したことから、10月16日付で警報の発表が、なされたとのことです。
こうした制度は、県民の皆様にとっても交通死亡事故が多発していることが実感できるなど、交通安全意識の向上につながるいい取組であり、実際に警報発表後は、多発していた交通死亡事故もある程度歯止めがかかったと認識していますが、一方でしっかりと対策を講じなければ県民の皆様の不安を解消することはできないと考えます。
本年の交通事故死者数が、9月末時点までは昨年とほぼ同水準であったことを考慮すれば、一時的な増加であったのかもしれませんが、実際に10月中に交通死亡事故が多発した状況に加え、例年、年末には交通事故が増加する傾向にあるとのことから、交通死亡事故防止対策を一層強化する必要があると考えます。
そこで、警察本部長に伺います。
「神奈川県交通死亡事故多発警報」が初めて発表されるなど、交通死亡事故が多発した状況に加え、例年、年末には交通事故が増加する傾向にあるところ、県警察において交通死亡事故防止対策を強化する必要があると考えますが、警察本部長の所見を伺います。
(警察本部長)
はじめに、交通死亡事故の発生状況についてですが、昨日現在、県内で交通事故により亡くなられた方は103人であり、昨年の同じ時期と比べて2人増加しております。
特に、10月中の1か月間における死者数は19人であり、昨年の同じ時期と比べて10人増加しました。
県警察では、10月に入り、交通死亡事故が連続して発生したことから、10月13日から交通死亡事故防止特別対策を実施いたしました。
具体的には、県内全域において、街角での見守り活動や指導取締り等の交通街頭活動のほか、交通ルールの遵守を呼び掛ける広報啓発活動を強化したところであり、その後、県が発表した「神奈川県交通死亡事故多発警報」の期間終了となる10月22日まで継続して取り組みました。
次に、年末に向けた交通死亡事故防止対策についてですが、例年12月は交通事故の発生が多く、特に歩行中の交通死亡事故が夕暮れ時や夜間の時間帯に多発する傾向にあるほか、年末は飲酒の機会が増えることから、飲酒運転による交通事故の発生が懸念されるところであります。
こうした情勢を踏まえ、県警察では12月11日から20日までの間、「年末の交通事故防止運動」を実施する予定であり、また、12月を「飲酒運転根絶強化期間」と指定して対策を強化してまいります。
具体的には、AIシステムによる交通事故の発生予測を活用した交通街頭活動等、各種取組を強化するほか、歩行中の交通死亡事故を防止するため、車両運転者に対する前照灯の早めの点灯、歩行者に対する反射材の着用について、広報啓発活動に努めてまいります。
また、飲酒運転の取締り強化や、自動車で仲間と飲食店などに行く場合に飲酒をしない運転者を決めておくハンドルキーパー運動等、関係機関団体とも連携した取組を推進いたします。
県警察といたしましては、痛ましい交通死亡事故の根絶に向けた諸対策を強力に推進し、県民の皆様が安全で安心して暮らせる地域社会の実現に取り組んでまいります。
(やなせ)
県警察においては、痛ましい交通事故の発生を1件でも多く防止するため、交通死亡事故防止対策を一層推進していただくことを求めます。