令和6年第3回定例会 やなせ が 提言!
ケアリーバーへの支援について
【質問】
児童養護施設や里親家庭などで育ち、18歳を迎え、高校卒業後に社会へと巣立っていく、いわゆるケアリーバーの方は、気軽に頼れる存在を持たず、孤立状態や生活苦に陥りやすいと言われています。
今年4月に施行された改正児童福祉法では、児童養護施設や里親家庭で、生活する子どもの年齢要件が弾力化され、一律に18歳で退所するのではなく、個々の事情を考慮した柔軟な運用が可能となりました。
また、一度退所して社会に出た後でも、何らかの事情により生活が立ち行かなくなった場合に、再び戻って再スタートを切れるまで支援を受ける事も可能となりました。
こうした仕組みは、ケアリーバーにとって「失敗してもやり直す事ができるのだ」と、心の余裕が生まれ、たとえ制度を利用しなくても安心感につながるものと言えます。
一方で、施設や里親さんの話を聞くと、退所後一旦連絡が取れなくなってしまうと、それ以後、なかなか繋がらず、どうする事もできないという状況が多々あるようです。
令和2年に厚生労働省が実施したケアリーバーに関する全国調査では、連絡が取れて調査票を配布する事ができたのは、対象者の約35%で、半数以上が連絡を取れない状況であったとの事です。
ケアリーバーへの支援については、相談体制の強化がとても大切ですが、関係が途切れてしまわないよう、日頃から連絡を取り合える関わりを持つ事が、何より重要ではないかと考えます。
そこで、知事に伺います。
県は、ケアリーバーとのつながりを継続し、必要な支援に繋げていく必要があると考えますが、所見を伺います。
【答弁】
県では、ケアリーバーの支援拠点である「あすなろサポートステーション」を設置し、児童相談所や児童養護施設等と連携しながら、ケアリーバーの自立を支援しています。
具体的には、日常生活や就労面での支援、法律相談や通院時の同行など、一人ひとりの困り事に応じ、寄り添った支援を行っています。
また、自立を控えた施設入所中の高校生などを対象とした就職セミナーや、社会人として独り暮らしをする際の資金計画講座などを通じ、ケアリーバーとのつながりを作り、自立後の継続的な支援につなげています。
しかし、施設や里親に相談のないまま、連絡が途絶えてしまうケアリーバーが少なくありません。
そこで、県では、引き続き、あすなろサポートステーションにおけるつながり作りの取組を進めるとともに、新たに児童養護施設等に、退所後もケアリーバーへの継続支援を行う専門スタッフの配置を進めます。
この専門スタッフは、困難に直面したケアリーバーの悩みや不安を受け止めて、生活の建て直しと安心して暮らせるためのサポートを行っていきます。
また、施設等を退所後も、困った時に躊躇なく相談できるよう、自立を控えた入所中の子どもたちにも、こうした新たな支援について周知していきます。
さらに、施設や里親の協力を得て、ケアリーバーの生活状況を定期的に把握した上で、つながりを継続するための効果的な方策を検討し、必要な支援につなげてまいります。
【要望】
ケアリーバーの組織的な受け入れ体制の構築や、全ケアリーバーへの定期的な把握に取り組むとのこと、県の新たな取組に期待したいと思います。
また、社会的養護の対象外であっても支援が必要な20歳未満の方も支援していくことが求められます。まずは、この支援の仕組みを高校で告知するなど、ケアリーバー以外の方への確実な周知にも努めてもらいたいと思います。
消費生活相談について
【質問】
「令和5年度 神奈川県内における消費生活相談概要」によりますと、消費生活相談総件数は、高止まりしています。特に、高齢者の被害が多い、屋根や給湯器などの点検商法や、成年に成り立ての若者をターゲットにした、マルチ・マルチまがい等の悪質商法の被害の割合が高くなっており、県民の安全・安心な消費生活を確保するため、早急な対応が求められているところです。
こうした被害への相談に対して、かながわ中央消費生活センターでは、相談者に「助言」を行うほか、相談者が事業者と直接交渉をする事が困難な場合は、専門の相談員が交渉を仲介する「あっせん」を行うなど、被害救済のサポートを行っている事は承知しています。
一方で、高齢者や若者をはじめとして、自主交渉に必要な「助言」を受けても、本人のみでは、その後の事業者との交渉が難しい事が多々あります。
また、消費生活センターの相談員による「あっせん」も、事業者への指導権限や、強制力のあるものではなく、悪質な事業者に対しては、必ずしも有効な手段とは言えません。
こうした対応では、解決が難しい案件について、県では、条例に基づき、弁護士や学識者で構成される「消費者被害救済委員会」が、専門的な見地から改めて「あっせん」を行う他、事業者の不当な行為に対して、被害者に成り代わって訴訟等が行える「適格消費者団体」などが存在します。
消費者トラブルを一つでも多く解消していくためには、相談員による「助言」や「あっせん」のみならず、こうした専門の知見を持つ団体や、様々な手法を組み合わせて、解決を図っていく事が必要であると考えます。
そこで、くらし安全防災局長に伺います。
消費者被害の防止と早期の救済を進めていくため、消費生活センターの相談員による対応に加え、より専門的な知見を活用し、多様化する消費者問題に対応すべきと考ますが、どのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
【答弁】
昨年度、県内の消費生活相談窓口には、6万件を超える相談が寄せられており、日々、専門の相談員が助言やあっせんを行っています。
また、弁護士や消費者問題の専門家等で構成する「消費者被害/救済委員会」への付託や、国が認可した適格消費者団体が、被害者に代わって、事業者に差止請求訴訟等を行うことでも解決が図られています。
しかしながら、近年、高齢者を狙った点検商法など、手口が複雑・巧妙化している悪質商法が増えており、法的な判断を伴う支援や、適格消費者団体との連携強化が重要です。
これまで、こうしたケースについては、無料法律相談等の紹介に留まっていましたが、今年度は一歩進め、相談員が受けた事案を消費者問題に詳しい弁護士に、直接繋ぐ高齢者向け法律相談を、今月開催しました。
今後も弁護士と連携し、ワンストップで消費者問題を解決できる体制を充実させていきたいと考えています。
また、県のホームページ上に設置した、悪質商法目安箱に寄せられた悪質事業者等の情報を、適格消費者団体にも提供することで、差止請求等、解決に向けた団体の活動を積極的に後押ししていきます。
こうした県の取組を改めて市町村にも周知し、専門的知見を持つ弁護士や団体の活用を促すことで、一層の消費者被害の拡大防止と救済に努めてまいります。
【要望】
今後も、専門の無料 弁護士と連携した相談会を開催し、必要に応じて、受けた相談をつなげていくとの事、是非、期待したいと思います。
また、既に存在する「消費者被害救済委員会」や「適格消費者団体」の、一層の積極的な活用や、それらの新たな取組みを、市町村が受けた相談に対しても、しっかり適用していくよう、改めてお願い致します。
花粉発生源対策10か年計画について
【質問】
花粉症は、我が国の国民病とも言われ、日本耳鼻咽喉科学会の最新の全国疫学調査において、その罹患者数は増加傾向にあるとされています。特に一般的に最も多い花粉症は、スギ、ヒノキの花粉を原因とするものとされており、本県においても、多くの方が、つらい症状に悩まされ、社会的・経済的にも大きな影響を及ぼしている事から、極めて重大な課題であると考えます。
こうした中、本県ではいち早く、花粉発生源対策に取り組んできたと承知しています。全国に先駆けて、花粉の少ない苗木や、無花粉の苗木の研究開発・普及にも力を入れてきました。
また花粉発生源対策は広域的な取組が必要である事から、平成20年度に、本県が主導して、九都県市花粉発生源対策10か年計画を取りまとめ、首都圏で共同して取り組む事とし、平成30年度には2期目の10か年計画も取りまとめています。
併せて本県独自で、スギ・ヒノキの本数を減らし混交林化を誘導する施策や、植え替えの計画を内容とする「神奈川県花粉発生源対策10か年計画」を新たに策定しました。
また、国では令和5年5月に、花粉症に関する関係閣僚会議において「花粉症対策の全体像」が閣議決定され、10年後には花粉発生源となるスギ人工林を約2割減少、将来的には花粉発生量の半減を目指して、新たな施策が実施されています。
こうして、本県が花粉発生源対策を推進する事により、多くの県民は、花粉症が激減する事を期待しています。しかしながら、現実の花粉発生源対策の取組状況を見ると、その対策は進んでいるとは言い難い状況にあり、実際に花粉症が減っているという実感も持つ事ができません。
花粉発生源対策10か年計画の、令和4年度時点での実績について見ますと、令和4年度までの目標面積に対して、混交林化が約6割、植替えが約7割と低迷しています。計画年数が残り5年を切った今、このままでは、計画期間内の目標達成は、困難と言わざるを得ません。
そこで環境農政局長に伺います。
多くの県民の悩みである、花粉症を減らすために、これまでの発生源対策を少しでも進める対策を、講じるべきと考えますが、所見を伺います。
【答弁】
この計画では、平成30年度からの10年で、スギ林等を間伐して広葉樹が混じった林に誘導する「混交林化」を5,000ha、伐採後に無花粉苗木などを植栽する「植替え」を360ha行うこととしています。
これらの目標は、水源施策による森林の確保が大きく進んだ平成20年度から29年度までの実績をもとに、混交林化についてはその1.1倍を、また植替えについては3倍以上を目標として設定しています。
一方で、近年は権利関係が不明確な森林が多く、混交林化を行うための新たな森林の確保が難しく、また植替えも木材価格が低迷し、伐採や植栽等の費用が賄えないために、計画は目標どおりに進んでいません。
そこで、少しでも対策を進めるため、もともと混交林化を目指していなかった森林のうち、条件が悪く、スギ林等の人工林として維持することが難しい森林については、目指す森林の姿を混交林に変更して、強度の間伐を行い、混交林化を進めています。
また、人工林として維持するスギ林等でも、平成30年度からの5年間で、延べ約7,000haを間伐し、着実に花粉が発生する木の本数を減らしています。
今後も、こうした対策を進めるとともに、植替えへの支援なども行い、少しでも花粉を減らせるよう、取り組んでまいります。
【再質問】
10か年計画の3年目である令和2年度で目標の半分を切り、直近の令和4年度では目標の2割を切っている厳しい状況の中、それらの新たな取組を行った場合、どれくらい目標に近づけると考えているのか、そのあたりの規模感を聞かせてください。
【答弁】
花粉発生源対策10か年計画の見通しについてお尋ねがありました。
目指す姿を混交林に変更する森林については、対象とする森林の詳細な調査や、所有者の意向確認を現在、順次行っているところです。
また、植替えの支援として令和5年度から始めた、成長が早く、手入れ経費の節減につながるエリートツリーの開発については、令和9年度の生産開始を目指し、品種の選抜等を進めている段階です。
そのため、今後どの程度の実績を上積みできるかの規模感を現時点でお示しするのは困難ですが、残りの計画期間内にできるだけ対策が進むようしっかりと取り組んでまいります。
【要望】
目標達成の見込みがたたないという事ですが、「九都県市花粉発生源対策10か年計画」を本県が主導して取りまとめている事もあり、対策実行に関しても、先頭に立って結果を出さなければならないと考えます。
ただ、インターネットで、同計画を検索しても、他都県市の取組があまり出てこない点も気になります。他都県市も対策に苦戦しているのかと推測しますが、改めて、この重要な取組みの機運を、主導県として責任をもって、盛り上げるようお願いしたいと思います。
また、近年は「花粉飛散防止剤」を用いた対策が、実証実験のフェーズに入ってきたようです。伐採だけではなく、このような新しい発生源対策も視野に入れ、さらなる研究と検討を進めて頂きたいと思います。
県住宅供給公社の住宅確保要配慮者への住宅供給について
【質問】
高齢者や障がい者など民間の賃貸住宅への入居が難しい、いわゆる住宅確保要配慮者にとって、県住宅供給公社は、良質で所得の少ない方でも入居しやすい公的賃貸住宅を供給する役割を担っています。
特に県の高齢者世帯は、2020年の約97万世帯から、2040年には約131万世帯へと大きく増加すると推計されています。中でも高齢の単身世帯については、約50万世帯から約71万世帯へ、約1.4倍に増加する事が見込まれており、今後も高齢化が進展していく中、県住宅供給公社の役割はますます重要となっていきます。
一方、公社住宅は、その4割が建設後50年を経過し、老朽化が進んでいます。そうした中、一部の団地では建替え工事が行われており、その結果、建替え前よりも家賃が高くなっています。
実際に、過去10年間における公社住宅の家賃の推移を見ると、6万円未満の低額物件が553戸減少する一方、11万円以上かつ16万円未満の高額物件が677戸増加しています。
このような状況が続けば、今後、家賃が高額にシフトし、所得の少ない要配慮者に対して低廉な家賃の公社住宅を供給していく事が、難しくなるのではないかと懸念しています。
私は、以前から、要配慮者対策にしっかりと取り組む事を示すためにも、公的賃貸住宅の供給量の目標を掲げるべきと考え、これまで委員会でもこの問題を取り上げてきました。
こうした中、令和3年度の県 住生活基本計画の改定の際に、公社住宅の供給目標量が設定された事は一定の評価をしています。しかし、このような状況の中、この目標も達成できなくなるのではないかと危惧しています。
そこで、知事に伺います。
県内の住宅政策を推進する県として、県住宅供給公社の住宅確保要配慮者向け住宅の供給目標の達成について、どのように考えているのか、所見を伺います。
【答弁】
県住宅供給公社は、良質で比較的安い住宅を供給するなど、高齢者等の住宅確保要配慮者の受け皿として重要な役割を担っています。
そこで県は、こうした役割を踏まえ、令和3年度に住生活基本計画を改定し、県公社による要配慮者への住宅供給量を、それまでと同水準の年間約500戸とすることとし、令和12年度までの10年間の供給目標量を5,000戸と定めました。
これまで、県公社では、令和3年度は461戸、4年度は445戸、5年度は539戸を供給しており、目標の達成に向け、概ね順調に推移しています。
一方、県公社では、今後、老朽化対策として、令和12年度までを目途に、約1,400戸の建替えを検討しており、建て替えられた住宅では、家賃が上がり、要配慮者は入居しづらくなります。
県公社からは、建替えを検討する住宅数は、県公社の全住宅数の約1割にとどまるため、今後の要配慮者への供給量に対する影響は小さいと聞いていますが、県は、引き続き、県公社に、供給量の報告を求めていきます。
さらに、目標の達成が困難と見込まれる場合には、入居の際に、引越し等の費用がかかるため、一定期間、家賃を免除するなど、要配慮者向けの入居支援の取組を拡大するよう、県公社に働きかけていきます。
このように、県は、県住宅供給公社と連携、協力しながら、住宅確保要配慮者向けの住宅を、将来にわたり供給できるよう、しっかりと取り組んでまいります。
【要望】
県は、県住宅供給公社と連携・協力しながら住宅確保要配慮者向けの住まいを、将来にわたり供給できるよう、しっかり取り組む旨の、いい答弁を頂いたと思っております。
一方、公社は入居を拒まない住宅を提供しているので、それだけで公社の役割は十分ではないかとする方もいるようです。しかし、実際のニーズに合った住宅が供給されなければ、それは絵にかいた餅になってしまいます。そのことをしっかり共有してほしいと思います。
今後増加する単身高齢者は、低廉でバリアフリーな住居を求めていると思います。これらの要件を満たした住宅の供給を、将来にわたり改めてお願いしたいと思います。
ややもすると、県は県住宅供給公社の事業に関与できないと考える向きもあるようですが、公社の公益性や県行政との密接関連性を改めて鑑み、県の責務を認識し、遠慮せず、答弁でも確認させていただいたように、公社と共に取り組んでもらいたいと思います。
居住支援法人への支援について
【質問】
居住支援法人は、高齢者や低額所得者など、住宅確保要配慮者が、民間賃貸住宅に入居する際に、その入居の支援をしています。
要配慮者の居住の安定確保については、県営住宅や、先ほど伺った県住宅供給公社の賃貸住宅が、中核的役割を担っている事は承知しています。
しかし、それらの住宅供給数だけでは不足しており、空き住宅の問題も抱える、民間賃貸住宅にも大きな役割を期待しています。
一方、民間賃貸住宅では、要配慮者の健康不安や、家賃滞納などに不安を感じる大家さんに拒否感を持たれる事もあり、入居が必ずしもスムーズにいかない、との問題も抱えています。
こうした問題に対して、平成29年に、住宅セーフティネット法が改正され、要配慮者の入居を拒まない民間賃貸住宅を「セーフティネット住宅」として登録する制度と、要配慮者に対し、こうした住宅などの情報を提供したり、生活にあたっての相談、見守りなどを実施したりする「居住支援法人」の制度が創設されました。
昨今、単身世帯の増加等により、高齢者や低額所得者などの賃貸住宅への入居に対するニーズが、更に高まる事が見込まれ、本年6月に、更に改正法が公布されました。
改正法では、住宅確保が困難な方は、生活困窮や障害、高齢など、福祉的な課題も有している事が多いと考えられ、従来の国土交通省に加えて、厚生労働省も共管とし、住宅施策と福祉施策の連携により、包括的な居住支援の強化を図る事としています。
この仕組みの中核となる、居住支援法人は、都道府県知事が指定する事となっており、県内では、これまでに40法人が指定されています。
居住支援法人に対する役割が、質・量ともに大幅に増えていく中で、県は居住支援法人の指定だけではなく、その活動をより効果的にするために、支援を強化する必要があると考えます。
そこで、県土整備局長に伺います。
県は、居住支援法人の活動に対して、今後、どのように支援していくのか所見を伺います。
【答弁】
居住支援法人は、高齢者や障がい者など、住宅確保要配慮者の賃貸住宅への円滑な入居を促進するため、家探しや、そこでの暮らしの相談、入居後の見守りまで、幅広い活動を行っています。
こうした活動には、賃貸住宅の情報はもとより、福祉サービスなど、様々な知識が必要となることから、県は、居住支援法人や市町村などで構成する、神奈川県居住支援協議会を設置し、セミナーの開催や意見交換などを行い、法人を支援しています。
一方、高齢単身世帯などの要配慮者が増加し、事情も複雑化する中、法人には、介護や障がい、生活保護への対応など、より専門的な知識が求められてきており、こうした知識を習得していただくほか、要配慮者向け賃貸住宅の改修に係る国の補助制度の拡充など、新たな制度も情報提供していく必要があります。
そこで、県は、県居住支援協議会の場を通じて、専門講座の開催や、最近の高齢者支援事例などをテーマとしたグループワークを実施するとともに、時宜を得て、新たな制度等の情報提供を行っていきます。
また、これまでの意見交換では、円滑な活動のため、各法人の得意分野を共有したいといった意見が寄せられていることから、得意分野をリスト化し、法人間での相談や協力をしやすくします。
さらに、法人への補助金について、国に、十分な予算確保を要望するなど、県は、居住支援法人の活動をしっかりと支援してまいります。
【再質問】
居住支援法人に対する県の支援については理解いたしました。しっかり頑張ってもらいたいと思います。地域の実情に応じて、きめ細かい居住支援を行うためには、市町村の居住支援協議会による居住支援法人に対する支援も必要であると考えます。
折しも、住宅セーフティネット法の改正により、市町村協議会の設立が努力義務化されました。そこで、県は市町村の居住支援協議会の設立をどのように促進していくのか。
また、設立した協議会に対して、どのような支援をしていくのか、伺います。
【答弁】
県は、全ての市町村が構成員となっている、県居住支援協議会の場で、これまでも、市町村協議会の設立を働きかけてきました。
現在、8市で設立がなされましたが、今後、地域福祉と連携した取組の増加などが見込まれていることから、県居住支援協議会の場に加え、市町村への個別訪問を行い、設立を積極的に働きかけていきます。
また、設立された市町村には、県が設置した市町村居住支援協議会連絡会議に参加していただくことになっていますので、この連絡会議を通じて、各種の情報提供や、それぞれの協議会での取組事例を紹介するとともに、生じた問題は、一緒になって対応を考えるなど、市町村の居住支援協議会を支援してまいります。
【要望】
今後、居住支援法人の役割は、福祉分野をはじめ一層大きくなります。国でも、厚生労働省と共管となったように、県としても、県土整備局だけではなく、福祉子どもみらい局としっかり連携し、支援体制の構築をお願いしたいと思います。
そして、居住支援協議会をはじめ、そこで増加する関連機関、例えば福祉事務所や、地域包括支援センター等の役割が市町村でばらばらであっては、市町村をまたいで活躍する居住支援法人は困ってしまいます。県が主導して各関連機関の支援体制のひな形を明示する等、仕組みの底上げにも努めていただきたいと思います。
また、居住支援法人に一層の協力をお願いする中で、各支援法人の貢献を評価する仕組みも必要になってくると思います。こちらの検討も是非お願いいたします。
等々、お願いしたいことはたくさんありますが、改めて、福祉子どもみらい局と共に、これらの課題に一層積極的に取り組んでいただくようお願いいたします。
県立産業技術総合研究所(KISTEC)の運営基盤の強化に向けた取組について
【質問】
本県では、工業製造品出荷額が愛知県に次いで国内第2位と、製造業が基幹産業でありその成長が本県の地域経済の活性化にとって大変重要です。一方で、製造業の中心を担う中小企業における生産性は伸び悩んでおり、本県での事業所数も減少傾向にあります。
その要因として、中小企業では、新たな技術の開発や製造工程の改善など、生産性の向上に向けた取組を積極的に進めたいという意向があっても、経営資源に限りがあるため、なかなか手を付ける事ができないという事情が、往々にしてある事が推察されます。
こうした中、地域における中小企業の研究や、技術面の支援を担っているのが、公設試験研究機関、いわゆる公設試です。大学や国立研究所は高度な総合病院、公設試は町のかかりつけ医に例えられています。
一方で、公設試の現状は、予算に限りがある中、昨今の技術の急激な進化に対し、施設・設備等の近代化や、例えば、デジタルトランスフォーメーション(DX)やグリーントランスフォーメーション(GX)等、時代のニーズに対応できる人材の確保など、様々な課題があると聞いています。
本県において、このような鉱工業系の公設試の役割を担うのが、KISTECです。今年度からは、横浜市が昨年度末に廃止した公設試である「横浜市工業技術支援センター」の、一部機能も承継しており、広域自治体の機関として、その役割は一層増しています。
こうした状況の中、本県の地域経済活性化に不可欠である、中小企業の成長を促進するためには、KISTECの運営面における体制を強化していく事が重要と考えます。
そこで、知事に伺います。
県内中小企業の生産性の向上と競争力の強化に向けて、KISTECの施設、設備等の整備や、新たな人材の確保など、運営基盤の強化にどのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
【答弁】
KISTECでは、計画的な修繕等による施設の維持管理や、自己財源や国の補助金などを活用しながら、企業ニーズに対応した設備等の整備を進めています。
また、大学への訪問活動や、学会誌への情報掲載など、様々な取組を通じた採用活動により、人材確保に努めてきました。
しかし、デジタルや環境分野等の新たな技術への対応や、生産性の向上など、中小企業の課題が多様化する中、そうした課題にきめ細かく対応していくには、KISTECの運営基盤を一層強化する必要があります。
そこで、KISTECでは、中小企業に対するデータやデジタル技術支援において求められる、高速で信頼性の高い通信ネットワークを新たに構築するなど、情報通信基盤の強化に取り組みます。
また、首都圏の公設試験研究機関と連携して、所有する機器や提供可能なサービスを共有化するほか、インターンシップの相互実施や研究者の交流をさらに充実させ、職員の能力向上を図っていきます。
さらに、ユーチューブ等のSNSを活用し、支援事例や研究成果等の情報を発信し、KISTECの認知度向上を図ることで、新たな人材の確保につなげていきます。
県としては、こうした取組を支援することで、KISTECの運営基盤を強化し、県内中小企業の生産性の向上と競争力の強化につなげてまいります。
【要望】
県の中小企業支援に関して、個々の企業に対する補助金や融資の優遇等の資金面の支援のみならず、今回質問したKISTECの運営基盤の強化を通して、広域自治体ならではの、生産性や競争力の向上に資する環境面の支援を一層お願いしたいと思います。
公営企業資金等運用事業会計について
【質問】
企業庁の「公営企業資金等運用事業会計」は、川崎臨海工業地帯の土地造成事業などで得た収益等を原資とし、その資金を使って一般会計や水道事業会計など他の会計への長期貸付けや、地域振興のための施設の整備など様々な事業を行ってきました。
これまで、その時代時代のニーズに応じた事業を行いながら、一定の役割を果たしてきたとは思いますが、現在では、例えば、資金貸付事業の貸付先のほぼ100%が、同じ企業庁の水道事業会計であり、その貸付残高は500億円を超える規模で、水道事業会計は毎年約1億円の利息を支払っています。
また、地域振興施設等整備事業については、市町村からの要請に基づき、企業庁が施設を整備するもので、昭和50年代に始まりましたが、現在では、PFIなど民間活力を活用した施設の整備手法も選択可能であり、企業庁に依頼せずとも新規の施設整備ができる状況になってきていると思います。また、実際のところここ数年市町村からの新たな整備要請が途絶えている状況であると承知しています。
私は昨年11月の本会議での質問で、公営企業 資金等 運用事業会計の見直しを図るべき、という事を指摘しました。それに対して、企業庁長からは事業の成果や課題の検証と市町村等のニーズを精査の上、事業の必要性・あり方等について検討を行うという主旨の答弁がなされています。
500億円を超える貸付け事業を、抜本的に、直ちに見直す事が容易でない事は理解しますが、現在、公営企業資金等運用事業会計が、水道事業会計から受け取っている利息は、最終的には水道利用者の負担に行き着くものであり、大きな見直しを待つ事なく、できる部分からでも改善を図っていく事も必要ではないかと考えます。
また、地域振興施設等整備事業については、市町村が他の手法を用いて施設整備ができる状況にある中でも、この事業を続ける必要があるのかどうか、疑問に思います。
そこで、企業庁長に伺います。
公営企業資金等運用事業会計で行っている水道事業会計への長期貸付けと、地域振興施設等整備事業について、具体的にどのように見直しを図っていく考えなのか、所見を伺います。
【答弁】
はじめに、水道事業会計への長期貸付けの見直しについてです。公営企業資金等運用事業会計は、県などが行う建設事業への低利貸付けを通じて住民福祉の向上に寄与しており、現在は、主に水道事業会計への貸付けにより、水道管の更新等を支えています。
この貸付けは、たとえ企業庁内の他会計に対するものであっても、法律上、一定の利息を伴うこととなります。一方で、水道事業会計が支払う利息は、最終的には、県営水道の利用者の負担となりますので、企業庁としては、その目線に立った対応も必要です。
そこで、来年度からの水道事業会計への新規貸付けについては、利率を更に軽減し、水道利用者の負担を抑える中で、管路整備を後押ししていきます。併せて、密接な関係性を有する両会計の将来のあるべき姿についても、議論を進めていきます。
次に、地域振興施設等整備事業の見直しについてです。市町村の人的・財政的負担を抑えつつ施設整備を行う同事業は、これまで11市町・19施設で活用され、地域振興に貢献してきました。
しかし、ここ数年は新たな施設整備の要請がないことから、今後の活用見込みを改めて市町村に確認したところ、建設計画自体が少なく、また、民間委託等で代替可能である実態が明らかとなりました。
そこで、今後は、事業の廃止も視野に、廃止した場合の影響や対応等について市町村と検討を進め、年度内を目途に方向性を整理してまいります。
【要望】
昨年の11月の本会議での企業庁長の答弁に基づき、しっかりと前進して取り組んで頂いて、また、検討して頂いたことを評価したいと思います。
また、今回の質問では触れませんでしたが、「プロミティふちのべ」の経営のあり方の検討も同様に、早期にお願いしたいと思います。
公共工事の入札について
【質問】
公共工事の入札において、同価格の入札によるくじ引きが高い確率で発生している事について、令和元年の第3回定例会や令和4年の第3回定例会などでこれまで取り上げてきました。
くじ引きの発生状況は、最初に質問で取り上げた際の平成30年度の実績では、県土整備局が競争入札を実施した予定価格1億円以上の工事117件のうち44件がくじ引きであり、その発生率は37.6%でした。
それ以降も、令和元年度49.5%、令和2年度43.8%、令和3年度59.3%、令和4年度39.3%、令和5年度46.3%と、依然高い割合で発生している状況であり、残念ながらくじ引きの多発が常態化しています。
本県では、積算基準及び最低制限価格率の算定式など全てを公開している結果、事業者は最低制限価格で入札せざるを得ない状況が生じ、価格による競争だけでは結果として、くじ引きが多発してしまう事は理解しています。
それに対し、令和4年の第3回定例会では、価格競争だけではなく地域への貢献度などの社会性や技術力の視点で事業者を選定する事にも取り組んでいるとの答弁がありました。しかし、くじ引き発生率が高止まりしている事を鑑みると、その取組みは未だ十分とは言えません。
このような中、川崎市では、昨年度より、価格競争による入札で生じる、くじ引きを減らす新たな取組みを試行しています。言いたい事は、県下においてもくじ引きによる落札に明確な問題認識をもち、その対策に果敢に努力している自治体もあるという事です。
さらに、地元建設業者からは、くじ引きにより落札者を決定する事が多発し、発注された工事を落札できるかどうかが運次第である状況に関し、技術力の向上や人材育成等に、真面目に取り組んでいる企業の努力が報われず、入札参加意欲に影響してしまう、また、受注の見通しが立たず、経営の安定確保に影響が出てしまう、といった声が届いています。
そこで、県土整備局長に伺います。
改めて、くじ引きの多発は、技術力や経営力に優れ、競争力が高い地元建設業の育成の観点からも、決して望ましい状況ではないと考えます。
また、そもそも、くじ引きの多発は、よりよい事業者を選定するという、県の責務を果たしているとは言えない、と強く思います。
公共工事の入札の実施にあたっては、価格で差がつかないのなら、事業者の努力も評価し、より良い事業者を選定する事も大切だと考えますが、所見を伺います。
【答弁】
公共工事の入札にあたり、地域への貢献度や、高い技術力といった視点で、事業者を評価し、より良い事業者を選定することは重要です。
そこで県は、「入札制度かながわ方式」として、災害協定を締結している事業者や、優秀な工事成績を収めた事業者などを対象とした「いのち貢献度指名競争入札」と、「インセンティブ発注一般競争入札」の、2つの方式に取り組んでいます。
また、技術力や施工実績などを総合的に評価し、落札者を決定する、「総合評価方式」も行っており、現在、この3つの方式による工事発注件数は、県土整備局全体の約5割となっています。
総合評価方式については、主に大規模で難易度の高い工事で行っていましたが、中小規模の工事でも技術力の向上を促すため、評価する項目数を絞り込んだ簡易なタイプを導入するなどして、実施件数を増やしてきました。
さらに、これまで総合評価方式の実績がほとんどなかった建築工事においても、今年度からは、この方式での入札を実施していきます。
県は、今後も、これら3つの方式による入札件数を確保していくことで、地域への貢献や技術力の向上といった事業者の努力を評価し、より良い事業者を選定してまいります。
【要望】
県もくじ引きの多発に、問題意識をもって、簡易的な総合評価方式の導入や、建築工事に対し更に総合評価方式を増やしていくという県の姿勢は評価したいと思います。しかし、これらの努力が、くじ引き発生率の抑制に繋がるよう改めてお願いしたいと思います。
一方で、くじ引きの多発はやむを得ないという声もあります。しかし、令和2年 決算特別委員会での私の質問に対する答弁によれば、平成28年度と少し古いデータではありますが、神奈川県のくじ引き発生率39%は、東京都の3%、埼玉県の14%に比べ著しく高いことが示されています。この事実も踏まえ、神奈川県のくじ引き発生率は、決して普通ではないと、改めて明確に問題認識し、一層果敢な対策をお願いしたいと思います。